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2022.12.14 concept

香りと空間デザインの話

人間の脳の中で、記憶や情動、喜怒哀楽などの感情をつかさどっているのは「大脳辺縁系(海馬・偏桃体)」という部分。

五感のうち、嗅覚以外の4つ(資格・聴覚・味覚・触覚)は視床下部を通って

大脳皮質のそれぞれの感覚領域に情報を伝え、それから大脳辺縁系へ信号として送られます。

それに対し、嗅覚は大脳辺縁系に直接つながっているため、情報がダイレクトに伝わり、

他の五感に比べて感情や記憶への影響が大きいと言われます。たとえば、雨の降り始めの土のにおいが一定の

シチュエーションの記憶を蘇らせたり、人混みである香りを嗅いだ時に、大好きな人のことを思い出したり。

そんなフラッシュバックの経験は誰にでもあるでしょう。

そんな特定の匂いがそれにまつわる記憶を誘発する現象は、スランスの文豪マルセル・ブルーストの名にちなみ

「ブルースト効果」と呼ばれています。

匂い=香りに結びついた記憶は、他のそれよりも強く簡単に薄れることはありません。

 

それは、空間づくりにおいても同様です。

心地よい空間にはふと気づくと良い香りがあり、そこに滞在したという事実を強く印象づけ、メモリーとして残します。

空間は、それ自体無機質ですが、そこに人がいたり植物が存在することによって有機的で暖かなものになります。

空間と香りの関係にもそれに似て、香りのしないスペースはどこかよそよそしく、冷たいものに感じられ、なんとなく気分が落ち着きません。

逆にほのかな芳香を感じる空間は、その香りが気持ちに働きかけ、気づかないうちにポジティブな感覚に。

このように感情に変化を与える香りは、空間にとって非常に大切なファクター。

空間デザインとは何も設計やインテリアだけの話ではありません。

そこに「香り」を加えることによって、より多次元的で五感に訴えることのできるものになるのです。

人は「情報」の80%を「視覚」から得ますが、「感情」の80%は「嗅覚」によってもたらされるもの、アートスは、

科学的なエビデンスをベースに香りの世界をとらえ、それによって忘れがたい空間のデザインを可能にします。

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